■第3弾「味覚を清める」山崎英恵×小山鐘平

天然出汁の摂取で味覚が変わる?


小山 近年、食事の偏りや加工食品中心の食生活で、特に若い世代が濃い味わいを好む研究結果が報告されています。私が20代の頃に出汁の研究を始め、毎日出汁を飲んでいると、味覚が変化していくのを感じました。味に敏感になり、強すぎる味を好まなくなりました。日々の食事が味覚にどんな影響を及ぼすかは十分な研究がされていません。
そんな中私たちは、和食の基本である「天然出汁」のやさしい味が味覚に何らかの影響を及ぼすのではないかと考えました。そこで、「天然出汁」の継続的な摂取が味覚にどんな影響を及ぼすかを調べたいと、龍谷大学の山崎先生にお話をしました。

山崎先生 小山さんから、社内の実験で出汁を毎日続けて飲むと、舌の感度が良くなるようなんですと伺いました。実際にどのような変化が見られるのか、また若い世代の学生でも同じような効果があらわれるのか、一度検証してみましょうかという話になりました。今回は龍谷大の20~23歳の女性9名を対象に出汁を毎日飲んでもらい、1週間ごとに味覚の検査をしました。

小山 どのようにして出汁を飲んでもらいましたか?

山崎先生 今回は、神宗の商品、まぐろ節と天然利尻昆布の合わせ出汁である「神宗の飲むだし」を用いました。飲み方は、1日180mlを2週間、毎日継続して空腹時や満腹時を避けて飲んでもらいました。味覚の検査では、基本五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)を10段階の濃度で調整したものを用意して、濃度の低い順から試してもらい、味を感じた時点で何の味か回答してもらいました。

小山 結果はどうでしたか?

山崎先生 甘味以外の4つの味については、薄い濃度でも自分が今飲んでいるものが何の味か判別できるようになってきました。特に「うま味」と「酸味」は他の味に比べてかなり薄い濃度でも判別できる学生が多くでてきました。

小山 出汁を飲むことで「うま味」と「酸味」を特に敏感に感じるようになったんですね。

山崎先生 そうです。基本五味の中でも、低い濃度で感じられる時期や変化の大きさは異なっていました。甘味以外の4つの味に関しては、1週間おきの検査のみでも差が出て、味覚の学習効果があると考えられます。

※味覚閾値とは、その味を感じられる最も薄い濃度

出汁を飲むことが味覚のトレーニングになる


山崎先生 今回、学生に毎日出汁を飲んでもらうときの注意点として、ご飯と一緒ではなく、少し小腹がすいたときに出汁だけを飲むようにしてほしいと伝えました。
研究室でも、小腹が空いたときによくおやつを食べている姿をみますが、出汁を飲むことで間食がなくなったという学生の声を聞きました。あと、寝る前に飲む学生もいて、「身体が温まって、よく眠れるんです。しかも寝る直前に飲んでも罪悪感ゼロ。」とも。出汁はカロリーがとても低いのに、満足感が高いのが良いですね。

小山 そうですね。いい結果が出て良かったです。確かに甘いものに病みつきになるよりも出汁を飲んだほうが健康的ですね。あと、味覚は習慣による影響が大きいと思います。毎日飲むことで習慣が変わり嗜好が変わっていくと良いなと感じました。

山崎先生 もう一つ今回の実験でわかって良かったことは、味があるのは分かるけれど、それが「うま味」と分からない学生が多いことでした。何かの味がするけど、何の味か分からないところを「うま味だよ」と教えられることで認識し、毎日うま味を多く含む出汁を飲むことで、わずかなうま味でも探し出せるようになったのかと。味覚を磨く良いトレーニングになっているのかもしれませんね。

小山 そうですね。現代生活において、料理人でもない限り毎日天然出汁を飲むという経験は出来ません。そのトレーニング、経験を手軽に行えるように「神宗の飲むだし」という商品を作りました。特にこの出汁は昆布から出る植物性のうま味が多く入っています。植物性のうま味は動物性のうま味よりも認知しにくいのでしょう。まず出汁の美味しさを知ること、うま味を知ることが和食を知る初めの一歩で、海外の方にも是非紹介したいと思っています。

出汁からうま味を知り、日本料理を知る


山崎先生 海外の方は特に、うま味を表現する術を持たないと「これがうま味」だと分かりにくい味ですよね。だからこそ研究が進むのも、五味に加えられるのも一番遅かったのではないかと思います。
日本料理は美味しいけど、脂っこくもないし甘いわけでもない。海外の方からすると「どういう味の構成?」と思われるかもしれない。それは「うま味」という言葉がまだ浸透していないのもあるかもしれません。ふわっと感じてはいるけど、表現の仕方が分からない。
今回のように5日間飲み続けると、日本の出汁を体感でき、「うま味」を知ることで探しやすくなる。少しの量でも味を感じられると、ある程度薄味にしても味を感じられるようになってくると思います。何の味か分からないより、「これはこの味かな?」と少しの量でも認識できるようになるのは良いことだと思います。今回の実験で、味に敏感になるというよりも、出汁を飲むことでうま味を認識しやすくなったのではないかと思います。今後は、実験に参加してもらう学生の人数をさらに増やしたり、味覚への出汁の効果についての再現性を観察していきたいと考えています。

山崎英恵(やまざきはなえ)

龍谷大学農学部 教授。[専門分野]食品科学、栄養化学、自律神経活動、気分状態、おいしさ、嗜好、日本料理など[担当講義]調理のサイエンス、調理学実習[著書・論文]だしのおいしさに迫る(化学と教育)、柑橘系香気成分を含む飲料が自律神経活動や気分状態に及ぼす影響(アロマリサーチ)、コーヒー摂取が胃運動および自律神経活動に与える効果の検討(日本栄養食糧学会誌)など

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