「だし汁の美味しさ」
2019年5月8日(水)、今年もエコール辻大阪様にて、だしセミナーを行いました。
今年で5回目となる今回も、昆布だし、削り節だしを中心に、めんつゆ、洋風だしなど約30種類の試飲や、削り節体験などを通じて、日本料理の土台となる「美味しいだし」とは何かについて、学んでいただきました。授業の最後には、復習をかねた小テストも行い、「だし」についての理解を深めました。
セミナーの様子
昆布だしと、うま味の「相乗効果」
食材の中でも特に「うま味」が多い昆布は、和食の要です。昆布の種類や、だしの引き方の違い、その味わいについても詳しく学んでいただきました。
めんつゆの試飲クイズを行い、昆布だしの代わりに何が原材料として入っているかを考えていただきました。プロの料理人でも難しいクイズでしたが、見事正解した学生も!
「うま味」は、動物性と植物性があり、異なる種類を掛け合わせると、うま味が何倍にも膨れ上がる「相乗効果」があることを学び、昆布や鰹節だけではなく、様々な食物に含まれていることを実際に味わって実感していただきました。
削り節体験と、鰹節が出来るまで
プロの料理人の指導のもと、削り器で実際にまぐろとかつおの荒節を削りました。「シャッシャッ」と、節が綺麗に削れていく音があちこちで聞こえます。
削りたての荒節は、ふわふわで香り豊か。自分で削った節と、予め用意した混合節を食べ比べて味の違いを感じていただきながら、「荒節」と「本枯れ節」の製法による違いや、魚の種類による味の違いを、実際に舌で実感していただきました。さらに、使用した節の違うめんつゆの味くらべなどを行いました。
美味しい一番だしを知るために
美味しい一番だしを味わうことも大切ですが、美味しい一番だしが何かを知るために、「美味しくない」一番だしがどういうものなのかを知っておくことも重要です。3種類の「美味しくない」一番だしを試飲し、美味しくない原因は何なのかを考えました。美味しいだしと飲み比べると、種類によっては、思わず眉を寄せてしまう学生もいました。
だしは日本料理の土台であり、だしが美味しくなければ、当然料理も美味しくはなりません。だしの美味しさを構成する要素やバランスを知っておくことで、美味しいだしをきちんと引けるようになるのです。
だし引きの実演
実際に昆布と削り節を使って、一番だしの引き方を実演しました。
プロの料理人による実演に、興味津々で動画を撮影される方もいらっしゃいました。
2種ずつの昆布と削り節の組み合わせで4種の一番だしを作り、昆布と削り節には相性があることをお話ししました。どの組み合わせがどの料理に向くかは、プロの世界です。繊細な味わいの違いとなり、学生の皆さんは何度も飲んでじっくりと味くらべをしていました。
塩分濃度の重要性
飲み比べた一番だしに、各自で食塩を少しずつ足して、お吸い物の吸い地を作りました。自分が「美味しい」と感じるまで食塩を入れ続け、塩分濃度計で数値を測ります。
一般的に、美味しいと言われる塩分濃度は「0.8%~1.1%」。それよりも少ない数値で「美味しい」と感じられる方が多く、一番だし自体がしっかり美味しければ、塩分が少なくても「美味しい」と感じることが分かりました。
料理の可能性を広げる「だし」の世界
授業の最後に、振り返りテストで、学んだことの理解を深めました。
昆布と削り節以外の「うま味」や、素材同士の無数の組み合わせ、洋風へのアレンジなど、だしは奥深く、可能性が大きいものだということが実感していただけたと思います。今回のセミナーを通じて、将来の料理界に羽ばたく皆さんの、知識を深めるきっかけの一つになれば幸いです。