2024年10月7日(月)・10日(水)の2日間に分けて、今年もエコール辻大阪様にてだしセミナーを行わせていただきました。
今年で9回目となる今回も、「おいしさの科学」というテーマをもとに、昆布、削り節を中心に、合わせだし、めんつゆなど約30種類の試飲や、削り節体験などを通じて、日本料理の土台となる「美味しいだし」とは何かについて、学んでいただきました。
セミナーの様子
うま味の種類とそれぞれの味わい
初めは辻調様のセミナーで定番となった、めんつゆの試飲クイズ。
昆布だしの代わりに何が原材料として入っているかを考えていただきました。
答えは身近で意外な野菜です。
プロの料理人でも難しいクイズでしたが、今年は早々と正解する学生がいらっしゃり、小山はじめ、弊社スタッフも感嘆しました。
「うま味」は昆布や鰹節だけではなく、様々な食物に含まれていることを実際に味わって実感していただきました。
5種類の昆布だし飲み比べ、味わいの評価
食材の中でも特に「うま味」が多い昆布は、和食の要です。
実際に利尻、真昆布、羅臼の原藻を見て触って、匂いを嗅いだりしながら、昆布の種類や、だしの引き方の違い、その味わいについても詳しく学んでいただきました。
東京のミシュランレストラン「エスキス」の総支配人であり、ソムリエである若林英司様と、小山が共同で作成した「昆布だしの味覚チャート」は、ワインのティスティングのように昆布だしを様々な言葉で表現したものです。
スライドには、「潮の香り」や「磯の香り」の他「落ち葉のような香り」「硫黄の匂い」などのワードもあり、昆布だしに対しての新しい表現に出会い、学生たちは興味津々でノートに書き留められていました。
削り節体験と、鰹節が出来るまで
削り器で実際に節を削り、ふわふわの削りたてのまぐろ節を試食して頂きました。
削り体験は最初難しくても、コツを掴むと楽しくなって、節が小さくなるまでどんどん削られる学生が多数おられました。
削りたての節は香りも風味も良く、小皿に入れて自分の食べる分を確保する学生も。
誰の削り節が一番綺麗か競い合い、一番綺麗な削り節を削った学生には、グループから歓声や拍手が起こったりと、楽しい時間となりました。
動画では「荒節」と「本枯れ節」などの製法による違いや、魚の種類による味の違い、さらに使用した節の違うめんつゆの味くらべなどを行いました。
美味しい一番だしを知るために
美味しい一番だしを引けるようになるには、良い素材について知る事も大事ですが、「美味しくない」一番だしがどういうものなのかを知っておくことも重要です。
だしは日本料理の土台であり、だしが美味しくなければ、当然料理も美味しくはなりません。
だしの美味しさを構成する要素やバランスを知っておくことで、美味しいだしをきちんと引けるようになるのです。
そこで、3種類の「美味しくない」一番だしを試飲し、美味しくない原因は何なのかを考えました。
「美味しくない」はその人の好みによるものでなく、「〇〇だから」という確かな理由があります。
味覚を研ぎ澄ますことも重要ですが、美味しさには科学的な根拠があることもしっかりと学びました。
一番だしの引き方の実演
実際に昆布と削り節を使って、一番だしの引き方を実演しました。
小山による実演を興味津々で見学しながら、引き方のコツや、昆布や鰹節の詳しいことを質問する学生がおられました。
塩分とうま味の関係性
毎回セミナーでは定番となった吸い地つくりは、今回も盛り上がりました。引きたての一番だしに、自分が「美味しい」と感じるまで食塩や醤油を入れ続け、塩分濃度計で数値を測ります。
一般的に、美味しいと言われる塩分濃度は「0.8%~1.1%」ですが、引きたての美味しい出汁で作ると、それよりも少ない数値で「美味しい」と感じられる方が多い印象でした。
このことからも分かるように、一番だし自体が美味しければ、塩分が少なくても「美味しい」と感じることを実際に自分の舌で感じていただきました。
グローバルな視点から「和食」「だし」を意識する機会
授業の最後に、振り返りテストで学んだことの理解を深めました。
年々留学生が増えており、海外における「和食」や「だし」について文化や味わいの違いを話し合い、「和食」や「だし」がグローバルなコンテンツとして定着していることを体感しました。
今回のセミナーでは、料亭など和食業界の第一線で働くことが決まっている学生も参加しておられ、今一度基礎となる知識を再認識していただけたと思います。
このセミナーを通じて、「だし」が和食の基礎であること、その大切さを改めて感じていただければ幸いです。