「美味しさの科学」
2023年10月17日(火)・19日(木)の2日間に分けて、エコール辻大阪様にてだしセミナーを行いました。
今年で8回目となる今回も、「おいしさの科学」というテーマをもとに、昆布、削り節を中心に、合わせだし、めんつゆなど約30種類の試飲や、削り節体験などを通じて、日本料理の土台となる「美味しいだし」とは何かについて、学んでいただきました。
セミナーの様子
うま味の種類とそれぞれの味わい
初めに、めんつゆの試飲クイズを行い、昆布だしの代わりに何が原材料として入っているかを考えていただきました。
答えは身近で意外な野菜です。
プロの料理人でも難しいクイズでしたが、正解する学生もいらっしゃり、どよめきが起こりました。
「うま味」は昆布や鰹節だけではなく、様々な食物に含まれていることを実際に味わって実感していただきました。
食材の中でも特に「うま味」が多い昆布は、和食の要です。実際に利尻、真昆布、羅臼の原藻を見て触って、匂いを嗅いだりしながら、昆布の種類や、だしの引き方の違い、その味わいについても詳しく学んでいただきました。
削り節体験と、鰹節が出来るまで
削り器で実際に節を削り、ふわふわの削りたてのまぐろ節を試食して頂きました。
削りたての節は香りも風味も良く、「美味しくてやめられない」と言いながら、削ってはパクパク食べている学生も多くおられました。
動画では「荒節」と「本枯れ節」などの製法による違いや、魚の種類による味の違い、さらに使用した節の違うめんつゆの味くらべなどを行いました。
美味しい一番だしを知るために
美味しい一番だしを引けるようになるには、「美味しくない」一番だしがどういうものなのかを知っておくことも重要です。
だしは日本料理の土台であり、だしが美味しくなければ、当然料理も美味しくはなりません。だしの美味しさを構成する要素やバランスを知っておくことで、美味しいだしをきちんと引けるようになるのです。
そこで、3種類の「美味しくない」一番だしを試飲し、美味しくない原因は何なのかを考えました。
「美味しくない」はその人の好みによるものでなく、「〇〇だから」という確かな理由があります。
味覚を研ぎ澄ますことも重要ですが、美味しさには科学的な根拠があることもしっかりと学びました。
だし引きの実演
実際に昆布と削り節を使って、一番だしの引き方を実演しました。
社長・小山による実演に、興味津々で動画を撮影される方もいらっしゃいました。
引き立ての出汁は香りが抜群!
香りに魅了され、鍋の方へ集まって夢中で香りを嗅ぐ学生が多く見られました。
そして、4種の合わせだしのパターンを作り、昆布と削り節には相性があることをお話ししました。繊細な味わいの違いとなり、学生の皆さんは何度も飲んでじっくりと味くらべをしていました。
塩分とうま味の関係性
毎回セミナーでは定番となった吸い地つくりは、今回も盛り上がりました。一番だしに、自分が「美味しい」と感じるまで食塩や醤油を入れ続け、塩分濃度計で数値を測ります。
一般的に、美味しいと言われる塩分濃度は「0.8%~1.1%」ですが、それよりも少ない数値で「美味しい」と感じられる方が多い印象でした。
中には、「0.1%でも美味しい」と言う学生もおり、教室内がどよめくシーンも。
このことからも分かるように、一番だし自体が美味しければ、塩分が少なくても「美味しい」と感じることを実際に自分の舌で学んでいただきました。
グローバルな視点から「和食」「だし」を意識する機会
授業の最後に、振り返りテストで学んだことの理解を深めました。
昨年度より留学生が増え、海外における「出汁」についての文化や味わいの違いを話し合い、よりグローバルな視点から「和食」や「だし」を意識する機会となりました。
今回のセミナーを通じて、世界的に注目を集める日本料理界に進んでいく皆さんの、確かな知識や経験のひとつになれば幸いです。