2022年11月8日・10日 エコール辻大阪様セミナー

「美味しさの科学」

2022年11月8日(火)・10日(木)の二日間にわたり、エコール辻大阪様にて、だしセミナーを行いました。
今年で7回目の開催。前回に引き続き、今回もアルコール消毒やマスクの着用など、感染症拡大防止に努めながらの開催となりました。

和食の基本となる昆布だし、削り節だしを中心に、めんつゆ、洋風だしなど約25種類の試飲や、削り節体験、吸い地作りなどを通じて、日本料理の土台となる「美味しいだし」とは何かについて、学んでいただきました。
授業の最後には、復習をかねた小テストも行い、「だし」についての理解を深めました。

セミナーの様子

昆布だしと、うま味の「相乗効果」


まずは、だしの旨みを感じるために重要なポイントとして、基本五味について、「うま味」について、そして「おいしさ」を構成する要素について学びました。基本五味については、これまでの授業でも習っていたということから、たくさんの学生が頷きながら聞いていました。

初めて見る原藻の大きさや質感、香りに興味津々の学生たち

そして、二つのめんつゆの飲み比べクイズ。
一つは一般的なレシピ通りの、昆布と鰹節の出汁で作っためんつゆですが、もう一つは意外な食材で出汁を取って作っためんつゆです。
皆さんは、何度も舌の上でその食材が何かを探りますが、なかなか正解がでてきません。
2018年度から始まった食材あてクイズですが、毎回正解する学生は1、2名しかいない難問です。
意外な食材の答えに、学生はもちろん、先生たちからも感嘆の声が上がりました。

昆布は、食材の中でも特に多くの「うま味」を含んでいます。5種の昆布の種類や産地、その味わいの違いについても、試飲を交えながら詳しく学んでいただきました。
さらに、引き方による味の違いも体験していただきました。

「うま味」は、動物性と植物性があり、動物性のうま味は鰹節や鶏肉、植物性のうま味は昆布やトマトなどに含まれています。これらの異なる種類を掛け合わせると、「相乗効果」でうま味が何倍にも膨れ上がります。
また、昆布だしを引くには水の硬度も重要で、硬水よりも軟水の方が昆布だしが出やすいことをお伝えしました。

削り節体験と、鰹節が出来るまで


鰹節の削り器で、実際にまぐろの荒節を削りました。削り節でよく見るのは鰹節ですが、鰹節はとても固くて手動では難しいので、今回はより柔らかいまぐろの荒節です。こちらは市場にあまり出回らないため、貴重な節です。
削る前の節を興味深く観察したり、削り器自体も初めて見た方が多く、グループのメンバーとアドバイスをし合いながら一生懸命削られていました。

小山が左手に持っている節がかつお節、右手がまぐろ節です
メンバーと交代しながら削ります
自分で削った節のおいしさは格別

節は削った瞬間から香りが飛んでいきます。自分で削った削りたての節と、予め用意した混合節を食べ比べて味や香りの違いを感じていただきました。
また、「荒節」と「本枯節」の製造工程の違いや、まぐろとかつおの種類による味の違いを学びました。

美味しい一番だしを理解する


美味しい一番だしを味わうことも大切ですが、美味しい一番だしが何かを知るために、「美味しくない」一番だしがどういうものなのかを知っておくことも重要です。
そこで、3種類の「美味しくない」一番だしを試飲し、美味しくない原因は何なのかを考えました。中には、飲んでみると眉を寄せてしまう学生もいるほど、美味しくない出汁も…。
だしは日本料理の土台であり、だしが美味しくなければ、当然料理も美味しくはなりません。だしの美味しさを構成する要素やバランスを知っておくことで、美味しいだしをきちんと引けるようになることを、体験を通して学んでいただきました。

だし引きの実演


実際に昆布と削り節を使って、一番だしの引き方を実演しました。
小山による実演に、興味津々で動画を撮影される方もいらっしゃいました。
2種類の昆布と削り節(利尻昆布・羅臼昆布、まぐろ節・かつお節)の組み合わせで4種の一番だしを作り、昆布と削り節には相性があることをお話ししました。
引き立ての温かい出汁を飲んで、何度も「美味しい」と言ったり、隣同士でほほ笑みあうシーンも。美味しい出汁の味や香りをじっくりと比べていました。

塩分濃度の重要性


飲み比べた一番だしに、各自で食塩や醤油を少しずつ足して、お吸い物の吸い地を作りました。自分が「美味しい」と感じるまで食塩や醤油を入れ続け、塩分濃度計で数値を測ります。
一般的に、美味しいと言われる塩分濃度は「0.8%~1.1%」。ですが、それよりも少ない数値で「美味しい」と感じられる方が多い印象でした。
一番だし自体が美味しければ、塩分が少なくても「美味しい」と感じることを学んでいただきました。

醤油と塩を少しずつ足して、塩分濃度計で濃度を測ります
人によって、美味しいと感じる濃度が違います

授業の最後に、振り返りテストで学んだことの理解を深めました。

受講生の中には、中国や韓国などの海外からの留学生も多く、改めて和食が海外でも注目を集めていることを実感できる機会ともなりました。
日本が世界に誇る「和食」「だし文化」を、改めて知識と経験で身に付けられる貴重な機会となれば幸いです。

淀屋橋本店 営業時間

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